バレンシア教室のあるバレンシア、トレンテを中心にスペインらしい(?) 楽しい、時には真面目なごくごく身近な日常のニュースを隔月に一度お届けします。 遠く離れた皆様に少しでもバレンシアの温かい雰囲気を感じて頂けたら幸いです。 【2001年9.10月号】 スペインタイル工房東京教室のみなさん、スペイン陶器の旅はいかがだったでしょうか? 今回はみなさんにお会いできませんでしたが、また機会がありましたらお会いしましょう。 8月のバレンシアは夏休みモード一色。各個人商店も夏休みまっただ中。こぞって田舎や海に 出掛けトレンテの街は気持ちいつもより静かです。暑い時は働かないという素敵な主義、 日本もみならいたいですね。しかし8月末となれば日没も早くなり(9時頃)、日中は灼熱のものの 太陽の日差しにどこか秋を感じます。暑い、暑いとうなっていましたが、夏って過ぎ去ってしまうと少し寂しくないですか?今回は7月にマニセスで開催された「陶器祭り」をレポートします。 (バレンシア在住 柳川佳代) |
「FIESTA DE LA CERAMICA」
7/15~18までバレンシア近郊の陶器の街マニセスで「陶器祭り」が
開催されました。この祭りは7世紀から毎年夏に開催されていて、マニセス市民、
陶芸家達にとっては最も重要な歴史ある祭りです。この祭りでは遡ること1749年、
市民によってFustaとRufina(女性2名が)マニセスの聖人に選ばれました。「聖人が
選ばれる」といっても私達にはピンときませんが、スペインでは都市、街、村ごとに
それぞれの聖人(santo)がいます。聖人=神様と言ったところでしょうか。
スペイン人の名前には各聖人の名前が付けられていることが多く、その聖人の日には
第2の誕生日のように祝う習慣があります。
スペイン人にとってこの聖人とは大変生活に密着した存在なのです。しかし現在ではこの習慣も変わりつつあり、子供の名前も聖人にとらわれず、アメリカ的な名前等増えてきています。
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毎年7/15~18にこのように市民の為の祭りが開催され、7/19は大切な聖人FustaとRufinaをマニセスの陶芸家達や一般市民が祝う日となっています。1週間前から踊りや音楽のコンサート等が開催され、また夜になれば城跡では艶やかな花火が夜空に舞いこの祭りを祝います。 この期間中は毎日午後からメイン通りにテントが張られ、マニセス各工房の陶芸家達の 職人技が披露されます。マヨルカ技法で手際よく複雑かつ繊細のタイル画を制作する青年陶芸家、おしゃべり しながらも手際良く慣れた手つきでビスクに絵付けをする年配の女性職人達。例えばこの年配の女性職人、 高さ15cmの花瓶などはたった数秒間で模様を考え、絵付け時間もほんの5分程度。私からすると感動の職人 技の連続! |
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他にも「オレは世の中でこのロクロと粘土の事しか知らないよ」とでも言いそうな
推測するに70年以上はロクロを操るおじちゃん職人や、粘土を指で転がしていると思ったらあっという間にヒメノ工房のシンボルである小鳥を作ってしまう職人達等。一人の少年がこの職人に「おじちゃん
何才からやってるの?」と質問すると職人は「君くらい(5才)からずっとやってるんだよ」と。興味があるから、好きだからという前に彼達は生まれた瞬間から陶芸家として育てられ、おもちゃの代わりに粘土や筆を持ち、理屈でなく本能で作業を営んでいるのだと、これぞ職人!という電撃が走りました。 実演して制作した作品達は全て見物者にプレゼントされます。欲しい形、柄を注文している女性もいました。またあるテントではロクロや絵付け体験ができるとあって大人や子供達で大変賑わっていました。 |
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絵付けをした陶器はその場で窯で焼いてくれるので、約30分程で持ち帰る事ができます。私も挑戦しましたが、どの顔料も筆も色が混ざりあってしまっていたので、柄など考えず自由奔放に絵付けを楽しむスペイン人に習って、気のおもむくままに制作する事にしました。 30分後に引き取りに寄るとまだ焼き上がっていませんでしたが、そこはスペイン流って事でこちらも気長に気楽に楽しむのがよいでしょう。 | |
7/18の"SANTOS(最も重要な聖人の日)前夜"にはパレードが行われマニセスの通り
は活気に溢れます。このパレード、日本で言うなら「山車」、の上から陶器を投げながら通りをねり歩くのです。そして投げられる陶器を獲得する為に通りでは熱い熱い戦いが繰り広げられます。
夜8時からのスタートとの事だったので、始まる前にBarで軽くビールをひっかけ、戦いに挑みましたが、待てど、待てど待てど、パレードは始まらず結局私は待ちくたびれて断念…。インフォメーションの写真によるとかなりの大きさの花瓶等も投げられていたので期待して挑んだのに残念。スペインにおいては根気も大変重要なのです。 私達のようにスペインタイルを勉強している人や観光客にとっても、伝統あるマニセス陶器の職人技を直接見て感じられる、すばらしい祭りでした。 |