line

バックナンバーに戻る

バレンシア教室のあるバレンシア、トレンテを中心にスペインらしい(?)
楽しい、時には真面目なごくごく身近な日常のニュースを隔月に一度お届けします。
遠く離れた皆様に少しでもバレンシアの温かい雰囲気を感じて頂けたら幸いです。

【2003年1・2月号】
「FELIC ANY 2003」(2003年明けましておめでとう!/バレンシア語)
今年もこのバレンシア通信を通して日本のみなさんに新年のご挨拶ができる事を大変嬉しく思います。
日本ではどのようなお正月だったでしょうか?スペインのテレビでも天皇陛下の新年のご挨拶風景や 東京の雪の模様等紹介されました。バレンシアも暖かい冬でしたが1/6頃を境に急に寒く冬らしくなりました。クリスマス、お正月モードも消え、街は冬のバーゲンで大賑わいです。(バレンシア在住 柳川佳代)




スペインのサンタクロース
「DIA DE LOS REYES MAGOS」(三賢者の祝日)

スペインでは昨年11月に北部のガリシア沖で石油タンカーの沈没事故が発生。大量の重油を船内に残したまま海底深くに沈み、現在もガリシアを中心にアストゥリアス、カンタブリア、バスク、フランス海岸に重油が流れ着いて汚染し続けている状況です。いつ終わるとも知れない海岸の清掃作業が地元住民や各地から駆け付けたボランティアの人々の手によって行われています。現在も毎日このニュースが各メディアで報道されています。
政府の対応、自然環境の破壊、失業した漁業関係者…などこの事件は多くの難しい問題を抱えています。 庶民レベルでは、魚介類の値段の高騰が一番の問題。ガリシアと言えばスペインに興味のある方は御存じかと思いますが、魚介類の宝庫でタコ、エビ、タラなど上質の魚介類がとれる事で有名です。魚介類を山程食べるクリスマスや年末年始を過ごすスペイン家庭では、この事件を境に魚介類の値段が高騰した結果、ユーロ導入後の物価上昇ともあわせていつもよりもお金が羽をつけて多く飛んでいってしまったようです。

belen.jpg
ninos.jpg スペインではいわゆるクリスマス期間とは12/24のイブから1/6の「DIA DE LOS REYES MAGOS」(三賢者の祝日)までを言います。12/24、25、大晦日の31日は以前にもご紹介したように、家族で夕食の食卓を囲みママの美味しい手料理を食べ賑やかに過ごし、食後はトゥロン(クリスマスに食べるお菓子。アーモンドを飴で固めた物やチョコレート等)をつまみながら、シャンパンを飲んで夜遅くまでTVを見ておしゃべりを楽しみむのが平均的な過ごし方。12/31の年越しは特に写真のようにパーティーグッズを身に付け、新年の幸運を祈り赤い下着を身につけて内も外も賑やかに身をつつみます。夜12時の12秒前から12粒のブドウを鐘の音にあわせて食べます。これで新年の幸福を願うのです。年末のスーパーには簡単に12粒のブドウを家族で分けられるように、既に12粒がパックまたは缶詰にされた「大晦日用ブドウグッズ」が売られています。房でブドウを用意した家庭はママや娘、嫁達がおしゃべりをしながら12時までにブドウの皮をむいて、一人前12粒ずつ用意をします。
日本のようにゆく年くる年のような新年を迎えるテレビ番組はありますが、なんと翌日の元旦にもそれを再放送して、あとは映画ばかり。(でもちょっと有名な面白い映画を放送。これは日本も同じ?)日本のかくし芸大会のようなお正月らしい番組はなく日本人の私はちょっと物足りない気分。1/2には通常通り仕事も始まりあっけなくスペインの新年が終わります。
前文でも書いたように1/6までがクリスマス期間で、最終日に子供達の大イベントがやってきます。 この日は一般的に「DIA DE LOS REYES MAGOS」(三賢者の祝日)と言われ、子供達にとっては年に一度の大プレゼントの日。近年では外国文化の影響により12月のクリスマスにもプレゼントをもらえるのがほとんど。つまり近年では大プレゼント日は年に二度あるということで親には少々痛いこの文化。
社会生活や風習上からも宗教が生活のすみずみまでに影響しているスペインでは、祝祭日はカトリックの祝日と同じ。このスペイン版のサンタクロースは東方から来た三人の王様(占星の学者メルチョール、ガスパル、バルタサル)が、星に導かれユダヤのベトレヘムの馬小屋を訪れ、生まれたばかりのイエスに拝し、黄金、乳香、没薬(もつやく)を贈った事に由来しています。
子供達は前年の12月に三人の王様に「一年間いい子にしてたのでプレゼントちょうだい」と手紙を送ります。実際に郵便局で手紙を出す子供もいたり、デパートや大きなおもちゃ屋ではプレゼントのリクエストBOXを設置したり、実際に子供達が直接お願いできるように王様がいたりします。そしてお願いが聞き入られたかどうか期待に胸踊らせてこの日が来るのを待ち望みます。前日の5日夜はラクダに乗った三人の王様のパレードを見にでかけ、興奮して眠れぬまま早朝に目覚めた子供達はプレゼントに大喜び。ちなみに悪い子供には石炭を形どったお菓子を贈ります。見かけは石炭ですが味は日本のかるめら焼きのようで美味しいですよ。 写真のように街の屋台でも石炭お菓子が売られています。
reyes1.jpg
reyes2.jpg 前日の5日の夜にはバレンシア中心地やバレンシア教室のあるトレンテでも王様の扮装をした3人が海の方から現れパレード用のカートに乗り行進が行われます。バレンシア中心地のパレードは各自治会、サッカーチームバレンシアFCのカート等数台が長い行列を作り、最後に三人の王様が各家来を従え豪華なカートに乗り登場。キャンディ、ボール、おもちゃ、お米500g袋などをまきながら海方からバレンシアのAyuntamiento(市役所)に向かって街中を巡ります。子供も大人もせめてキャンディ1個でも取るぞ!と気合い満々でパレードを見守ります。大抵の子供はお父さんに肩車で王様を見ようと万全の姿勢。私なんぞは肩車集団に視界をかなり遮られほとんど見られなかった!パレード後は道路に落ちているキャンディを拾いながらカフェに寄ってホットチョコレート、チュロスで身体を温めてから家路を急いだり、買い忘れのプレゼントを求めにデパートへと姿を消します。
なんともメルヘンチック、ロマンチックな祝日ですが、現実にはずいぶん商業化している感じがします。 通常日曜日はデパートをはじめ商業関係は全てお休みのスペインですが、クリスマスとこの王様の前日まで 休み返上でどこも営業。どこへ言ってもバーゲンセールのように人、人、人。小さい商店までギリギリの1/5の深夜12時近くまでプレゼントを求めてくるお客さんのために営業します。街にはいくつもプレゼント らしき物を持った人が急がし気に行き交う姿が多く見られました。
リカちゃん人形におままごとが定番だった私が子供だった20年位前からすると、随分おもちゃも変わった気がします。日本でもそうでしょうが、電子機器的なおもちゃが増え、またおままごとセットも巨大化し実際の台所みたいだったり。私の印象から言うと、女の子のおもちゃとして多いのが赤ちゃん、幼児の面倒をみるおもちゃがスペインには多い気がします。赤ちゃんと言っても白人、黒人、東洋風の赤ちゃんと国際的に種類豊富。ミルクを飲んでおしっこもする。おまけにゲップもするのも最近では登場。(ゲップさせて面白いのかな?)幼児のお人形さんもかなりの迫力。実際の5才児程度の身長、体格して遠目で見たら本物の子供のよう。1/6には巨大なおもちゃの箱がいたる所のゴミ収集場に積まれていました。
reyes4.jpg
reyes3.jpg 子供達は1/6になると王様からもらったプレゼントを見せびらかせがてら、おばちゃん、おじちゃん、親戚の家に訪問し更なるプレゼントを求めます。
そしてこの日には「RESCON DE REYES」(レスコン デ レジェス)と言う特別なケーキを親戚で集まって食べるのが習慣です。このケーキは写真のように円盤型のパンで上にはオレンジの甘露煮、色鮮やかなゼリー、砂糖、アーモンドスライスが飾られ、ケーキ中央になんとも愛らしいかわいい王冠が飾られています。近年ではこのパンの中に生クリーム、カスタードクリームがサンドされた物が人気だとか。スーパーでは約5ユーロ程度から、ケーキ屋では約12ユーロ程度で買えます。
実はこのケーキには面白い秘密が隠されています。ケーキの中に「HABA」(アバ、乾燥そら豆)と小さい小さい人形が各1つずつ隠されていて新年の幸運試しが行われます。切り分けられた自分のケーキの中に「HABA」(アバ)があった人はそのケーキ代を払わなければなりません。人形が当った人はラッキー!幸運に満ちた新年が迎えられるという物。幸運にも私は人形が当りました。ちなみに下の写真のような不思議なバスケ少年の人形でした。
年末の石油タンカー事故から始まり、ETAの終わらないテロ活動、ユーロ導入初年だった昨年一年で18%物価上昇、更に年明けとともに交通費を含め公共料金の一斉値上げ。不動産に関してはこの4年間では89%も上昇。当たり前だったマイホームも夢へと変わりつつ、上がらないのは庶民のお給料のみ…。暗いニュースが多く庶民の暮しにも影が感じられるスペインですが、2003年も太陽の明るい国、陽気なスペイン!バレンシア!!であって欲しいものですね。
reyes5.jpg

ちなみにケーキに入っていたのはこんな人形…。