エルカプリチョの街:コミーリャス

前回、ガウディ作のエルカプリチョという建物をご紹介しました。

今回はこのエルカプリチョがある街、コミーリャス(Comillas)について書きたいと思います。

コミーリャスは観光地で有名なサンティリャーナ・デル・マルからバスで20分ほど西へ行った海沿いの街で、空港もあるサンタンデールからも時間を選べば1時間程で直行バスが出ています。

この街に行く目的はもちろんエルカプリチョを見るためでしたが、それだけではないのです。この街にはガウディと並んで当時流行していたモデルニスモ建築の巨匠達~ドメネク・モンタネールやジョアン・マルトレイ~の作品やモニュメントが街じゅうにあるんです。ガイドブックにも載ってないし(そもそもコミーリャス自体が載ってない)、どんな作品があるんだろ?という興味もあり楽しみにしていました。

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まずは「ソブレリャーノ宮とチャペル=ジョアン・マルトレイ作」。

入り口まで行ってみましたが、この日はあいにく休館日でした。残念。。。マルトレイはガウディがまだ建築学校の学生だった頃からアルバイトで雇ってくれていた直接の師匠なる人物。サグラダファミリアの総監督にガウディを推薦したのもこのマルトレイと言われています。写真には写ってないですが、実は左端のチャペルの隣(同じ敷地内)にエルカプリチョがあります。師匠の作った建物の隣に弟子の建物が建っているのです。お互いにどのような気持ちだったのでしょうね。

さて、説明が後述になりましたが、なぜコミーリャスにはこんなにたくさんのモデルニスモ建築があるのでしょう?

前述のソブレリャーノ宮の持ち主はコミーリャス伯爵。名はアントニオ・ロペス・イ・ロペス。19世紀のスペインの植民地支配時代にキューバに渡って商売に成功し、財を成して大富豪となって故郷に凱旋帰国した人物です。この人の娘の結婚相手がグエルさん。ん?どこかで聞いた名前。そうです、ガウディの最大のパトロンで、バルセロナを代表する実業家です。グエル公園で名前を聞いたことがある人も多いと思います。ロペスは当時バルセロナで流行していた最新の建築を地元にも!ということで財力に任せて当時の最高クラスの建築家達を地元に呼び寄せたそうです。すでにグエルはガウディの実力を買っていたので、コミーリャスにも作品を作らせたのです。

説明が長くなりましたが、そういうことでコミーリャスはそれまではただの田舎の漁村だったのが、19世紀末にはブルジョア層の夏のリゾート地となり、プチバルセロナと化したのです。

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さて、作品紹介に戻ります。お次は教皇立大学。(司祭や修道士を輩出する神学大学のようです。)

まずは入り口のすごい存在感ある赤い門。「美徳の門=ドメネク・モンタネール作」。

モンタネールは、バルセロナの世界遺産、カタルーニャ音楽堂やサンパウ病院を作った人です。レンガ積みの赤い門の前面はタイル張りになっていて、ラスター彩が所々に施されています。「MARIA AVE MARIA」と読めますね。

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かなりの時間、写真を撮ったり彫刻を見ていたら、守衛さんが「入っていいよ」とゲートを開けてくれました。本来、見学はガイドつきの予約制のみ。ありがとう、守衛さん!

ここに来るまでかなりの上り坂でしたが、ゲートをくぐっても校舎まではさらに急坂です。

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さっき見ていたソブレリャーノ宮とチャペルが随分小さく見えます。さらにエルカプリチョの塔部分もちょこっと見えてます。

ようやく校舎に着きました。

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「大学本館=マルトレイ作、装飾・内装等=モンタネール作」。

設計したのはマルトレイですが、途中から装飾などに加わったモンタネールが最終的に完成させています。いわば合作ですね。残念ながら中には入れませんでしたが、ひと際目立つ鉄の門に近づくとー。こちらもやっぱりモンタネールの作品でした。

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モンタネールが彫る女性像は本当に美しいな、といつも思います。気品のある優美な感じの女性ばかりです。神学校にちなんで聖書などの宗教的なモチーフも見られます。ここまで来て中に入れないのは悔しいですが、とにかくまだまだ見るべきモニュメントがあるので先に進むことにします。

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こちらは「モロー邸の門=ガウディ作」。別名は鳥の門。一番大きな門は車用、中くらいのは人間用、そして右上の丸い窓は鳥たちのためのもの。なんてかわいいんでしょう!個人邸なので、興奮を抑えながら静かに見学です。

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よく見ると小さな石を積み重ねて作られています。それなのに丸みを帯びていて柔らかい雰囲気。ガウディならではの見事な曲線美です。角ばった凸凹石を全部研磨してるのかしら??丁寧で細かい仕事ですね。そして鳥のための門なんて、遊び心たっぷりですよね。ガウディのそういうところが大好きです。

この辺りは街一番の高台で、高級住宅街(別荘地)のようです。邸宅の目下には海が広がっています。私が歩いている時も、ひっきりなしにカモメや海猫のような鳥が飛び交っていました。きっとガウディも設計する時にたくさんの鳥に出会ったのでしょうね。

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モロー邸の門の近くの集合住宅の看板タイル。「カモメ」という意味です。やっぱりカモメが多いんだなー。

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こちらは「笛吹少女の家?」かな?少女なのかおばちゃんなのかは微妙なところ。

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街の中心地の広場です。「噴水=モンタネール作」。

噴水まで作ってるのかー。バルセロナでガウディ作のガス灯を見た時と同じ気持ちになりました。建築家ってなんでも作れるのね。。。

石像彫刻部分は人が触るのか、磨り減って丸くなってしまっています。

でも生活の中に巨匠作品が実用品として密着していることが伺えますよね。

今回は観光案内所でもらった「Ruta Modernista=モデルニスモの道」という地図の中から抜粋してご紹介しましたが、実際は全11か所あり、すべてを見て回りました。街を端から端まで歩き尽くした感じです。山あり谷ありで3時間くらい歩いていたでしょうか。

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モデルニスモ好きの方は、コミーリャスに1泊しても良いかもしれませんね。

巡礼の道沿いなので宿も予想以上に沢山ありました。

私が宿泊したサンティリャーナからだと、バスの時間に左右されて予想以上に時間がなかったです。こちらはバス停の時刻表。このボロボロ感、なんとかならないもんでしょうか。。。ま、時刻はかろうじて見えるからいいか(笑)。<KY>

スペインタイルアート工房HP

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