展覧会作品の制作裏話

2019年の「スペインタイルの装飾展」も無事終了しました。ご参加くださった方、ご来場くださった方、ありがとうございました。

会場もしくはその後の教室で、私の出品作品についてどのように作っているのか?と質問されることが多かったので、今回は作り方をご紹介したいと思います。

皆さんが想像しているよりも案外シンプルな技法で作っていますので、このブログを読んで「なーんだ、私にもできるゾ」と思われる方も多いはず。そんな方は是非この技法で作品を作ってみてくださいね。

1. デザインシートを作り、素焼きの白タイルにカーボン転写します。

2. 顔料57の黒でこの素焼きタイルに直接デザイン画を描いていきます。この時のポイントは濃く描くことです。(オイルは混ぜません、顔料は水で溶きます)

3. 一度焼きます。顔料にも少量のガラス成分が含まれているため、しっかりとタイルに定着します。

4. ここからはクエルダセカです。顔料で描いた線の上を構わずにシャーペンで囲っていきます。今回はかなりラフに。例えば葉っぱのギザギザは無くしてわざと丸みのある葉っぱに描いておきます。花びらやその他の部分も同様に最初に描いた黒の線よりもひとまわり大きくシャーペンの線を入れておきます。

5. スポイトで釉薬を流します。となり同士の釉薬がくっついちゃってもOK。今回はシャーペンの境界線をすべて無くした作品にしたいので、むしろくっついてしまった方が後々楽です。なので細かいことは気にせず、とにかくどんどん流していきます。修正ありき、で凸凹なども気にせずに。

6.釉薬を流し終えて1回目の焼成後です。当たり前ですがシャーペンで描いた部分はタイルの素地が出ていますので、これを無くすため、筆もしくはスポイトでここにも釉薬を入れてしまいます。5.でも書きましたが、修正は必ず発生することを前提にしています。ムラに焼き上がった部分の修正と同時進行でこの「境界線消し」もやってしまいます。

あ、この修正前に焼き上がったタイルを組み合わせて、色の流し間違いがないかのチエックも忘れずに。今回は9枚組のタイルですが、絵付け中は1枚ずつバラして絵付けしているので、気をつけていてもどうしても色間違いは起こります。実際に間違っている箇所を発見しましたが、修正でごまかせました(笑)

7.修正と線消しを終えた後の2回目の焼成後です。シャーペンの線は消えました。これで焼成は終了です。最初の顔料描き後に焼いた分も含めて計3回の焼成で完成です。

8.青の背景の色分けした波のような線だけは消さずに残してあるので、ここには金のアクリル絵の具を入れました。この金はあまり目立つ色にしたくなかったので、額縁にも使われているかすれた感じの金色を意識して、アンティークゴールドを塗って完成です。

先細筆が使えてスポイトで釉薬が流せれば、どなたでもできる技法です。

ただ、黒の線を生かすには、その線が透けて見える釉薬を選択しなければいけません。薄い色ばかりではインパクトに欠けるし、濃い色を使いたくても黒の線が見えなくなってしまっては意味がありません。そのための色のテストは、タイル制作以上に時間がかかりました。

イメージでは「こんな色合いに仕上げたいな」と思い描いていても実際はイメージ通りの色ができずに何度もテストを繰り返す日々。なかなかタイル制作をスタートできなかったのが正直なところです。でもテストを繰り返す中で、たまたま素敵な色が出来上がったりすることもあり、今回の作品には不向きでも、別の作品で使ってみようかな、という新たな発見があったりもします。

ちなみにこちらはデザイン画を描いている段階で色を迷っているところ。

一番濃い青部分を塗ってみたら、思ってた以上に黄色の印象が強すぎてしまい、その他の部分の黄色と緑のバランスを考えながら下書きシートを作りました。タイトルを「群青」と決めていたので、青の群れ=作品全体の印象を青、にしたかったのです。結局、タイル絵付けの段階でさらに色を変更したところもありました。思い通りの作品に仕上げるには、納得がゆくまで十分な準備が必要ですね。<KY>

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