陶芸家:河井寛次郎

陶芸家の河井寛次郎の作品を見に京都に行ってきました。

河井寛次郎は昭和初期に柳宗悦らが提唱した「民藝運動」に関わっていた陶芸家。

今年で生誕130年を記念して、アサヒビール大山崎山荘美術館で河井寛次郎展が開催されています。

場所はJR京都線山崎駅から徒歩10分。天王山の中腹の自然豊かな山の中に佇む瀟洒な洋館です。元は実業家の加賀正太郎の山荘でしたが、加賀氏の没後を引き継いでアサヒビールの創業者である山本為三郎が美術館として開館しました。

山本為三郎は前出の「民藝運動」の賛同者であり支援者でもあり、河井寛次郎とも生涯にわたり親交をもち、河井作品の膨大なコレクターでもありました。

河井が作る作品は「民芸陶器」と言って、日常的に使ってこそ価値がある「用の美」を追求して作られています。山本は自宅で使う食器類や花瓶、漬物壺などを河井に注文し、実際に自宅で使っていました。今回のコレクション展は山本が実際に使っていた作品ばかりです。

残念ながら館内は撮影禁止で作品の写真が一枚もないので、パンフレットの写真でご勘弁を。

芸術品としての鑑賞用の作品ではないのですが、食器としてはかなりお洒落。昭和初期の頃の作品が多かったのですが、まったく時代を感じさせない作品ばかり。

素朴な中にも決して真似のできない色だったり造形だったりデザイン性だったりが見え隠れしていましたが、実際に使っていただけあってちゃんと料理映えするように計算されて作られているように思いました。

ちなみにこの山荘には本館以外に別館が2つあり、この別館はいずれも安藤忠雄が設計しています。今回のコレクション展は山手館の「夢の箱」で、もうひとつは地中館の「地中の宝石箱」。ここにはモネの睡蓮やルノワール、ピカソの作品などが展示されています。

庭園もたくさんの草木が生い茂っていて素敵ですし、本館のバルコニーからの美しい眺めも圧巻です。この景色を楽しみながらの喫茶スペースもあるのですが現在は自粛中とのことでした。

さて、ところ変わってお次は河井寛次郎記念館へ。こちらは京都駅からバスで15分位の五条坂近くにあります。河井の自宅兼陶工房だったところが現在は記念館となっています。

河井は陶芸だけでなく、木彫や文筆などにも精力的に取り組んでいました。

さらにこの自宅は河井が日本の民家(特に飛騨高山)を参考に設計したもので、家具や調度品のデザインも河井が行ったり製作したりしています。どこまでも多才で驚くばかりです。

こちらは居間。奥に中庭が見えます。中庭の奥には素焼き用の窯が、さらに奥には登窯まで設置されていました。登り窯は近所の陶工達と合同で使っていたそうです。この辺りは昔から陶工房が多くあったようですよ。

母屋は2階建になっていて、写真では見えにくいかもしれませんが居間の奥に箱階段があり、そこから2階へ上がれます。

2階にも河井の木彫やブロンズ作品まで飾られていて見応えは十分です。河井がデザインした木の椅子に座ってみましたが、すごく座り心地がよかったです。


ここに展示されているものはすべて生活に根差し、日常生活に馴染んだ家具や調度品ばかり。天気も良かった

せいか、この空間にいるだけで心地よく、縁側で日向ぼっこをしたい気分になりました。

記念館を後にして通りに出てみると、コーヒーのいい香りが漂ってきました。

香りに誘われて進んで行くと、豆の焙煎から行っているコーヒー屋さんにたどり着きました。

こちらも元は陶芸工房だったそうです。その当時の職人さんが作った素敵な青磁のカップでホッと一息。素敵なアートの旅になりました!<KY>

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