デルフトにある「プリンセンホフ博物館」に行ってきました。
この博物館は1400年初頭にカトリック女子修道院として建てられました。
オランダはプロテスタント信者が多かったため、その後の宗教弾圧などの影響で修道院は閉鎖され、オランダ政府に没収されました。
さらにその後、80年にも及ぶオランダ(対スペイン)の独立戦争中(1568年~1648年)には、オランダ軍を率いていたオラニエ公ウィレム1世の拠点としてこの修道院が住居として使用されていました。
当時のデルフトは要塞に囲まれた比較的安全な街だったそうです。展示されている街の地図を見ると、確かに街の周りがぐるりと壁で囲われているのがわかります。
ところがこの戦争中の1584年、ウィレム1世はこの邸宅で暗殺されてしまいます。
当時のスペインの王、フェリペ2世を崇拝していた熱心なカトリック信者によって銃撃されたのです。その銃弾の跡が、今も壁に残っています。
現場は階段脇なのですが、近づくと銃弾の音とフラッシュが光る仕掛けになっていて、おとなの私も一瞬ドキッとしました。
暗殺後ももちろん戦争は続き、最終的にオランダは独立を勝ち取ることができました。オラニエ公は志半ばで倒れましたが、国民に愛されたこの王は、オランダの建国の父と呼ばれています。
突然ですがみなさん、オランダのイメージカラーは何色だと思いますか?
答えはオレンジです。オリンピックなどでスポーツ選手のウェアなどを思い浮かべると「ああ!」と思う方も多いと思います。国旗は赤、白、青ですが、なぜオレンジなのでしょうか。
その答えはこのオラニエ公の名前から来ています。オランダ語でオラニエは「oranje」=オレンジなのです。オレンジ公なのでイメージカラーもオレンジになったそうです。
なんでオランダのイメージカラーがオレンジ?と疑問に思っていたので、この事実を知って、ものすごく納得しました!
話が脱線しましたが、この歴史的大事件が起きた建物が現在は「プリンセンホフ博物館」となりました。
1階は主に上記の歴史についてや、デルフトの街についての歴史展示。
そして2階はほぼデルフト焼きについての展示でした。
ロイヤルデルフト社のきらびやかな展示とはひと味違った、いわゆる考古学博物館的な展示です。
元々中国の磁器と同じようなものを陶器で作ろうと試行錯誤していた様子が手に取るようにわかる展示となっていて、私にとってはすごく興味深い展示でした。
中国の細密なデザインをまったく同じように模写して作った皿や壺が本物と並べて飾ってあったり、真似してみたものの、失敗して割れてしまったものや釉薬がうまく乗らずに泡ぶくだらけになってしまったものだったり、大きく湾曲してしまったタイルだったり。。。失敗品や欠損品だらけの展示。
でも伝わってきましたよ、四苦八苦してなんとか自国で生産できるよう努力している様子が。ビシバシと。
きっと当時はほとんどが失敗作だったのではないでしょうか。今のように様々な研究がなされているわけではないので、とにかく地道に作っては焼いての繰り返しだったのでしょうね。
こういう欠けたものを集めたものも、今でこそ「これもアート」と呼べるかもしれませんが当時は失敗した単なる陶器の破片でしかなかったですよね。
博物館の庭にもこれらを使ったモザイク風ベンチがありました。
これはこれで立派なアート。むしろ完品よりもこちらの方にそそられます。。。
今私たちが成形から絵付け、焼成までをほぼ失敗なくできるのは先人達が幾多の失敗を繰り返してくれたおかげなのだ、とあらためて感謝したのでした。
デルフトに日帰り観光に来た場合はスルーしがちな博物館ですが、陶芸やタイル絵付け、もしくはものづくりをしている人、そして世界史やオランダの歴史に興味のある方にはぜひ訪れてほしい場所だなと思って今回もしつこくデルフトを紹介させてもらいました!
長々とお付き合いいただきありがとうございました!
あ!
ロイヤルデルフト社のハイティーにも行ってきました。
豪華で優雅なランチタイムになりました~<KY>
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