前回のブログに引き続き、九谷焼と山中漆で有名な加賀温泉の旅の後半です。
後半の2日目は山代温泉から山中温泉へと移動します。
山中座という観光館内所や公衆温泉浴場がある街の中心部までレンタカーで約10分。周遊バスを利用しても15分という近さです。山中座の前に停まっている周遊レンタカー(手前右)の塗装は山中漆風でとっても雅な印象。
この山中座をスルーし、観光スポットである温泉街の散策路も通り過ぎて向かった先は山中うるしの里。
この里には漆塗りの工房はもちろんのこと、木挽き工房もあります。木挽きとは、漆器の素材である木地を木工職人さんがろくろで挽いて作る器のことです。
山中温泉には日本で唯一の木挽きの専門学校があるそうです。全国の有数な漆塗りの産地にも、ここ山中の木地が多く使用されているそうですよ。
私が訪ねた工房では、女性の職人さんが作業をされていました。お話をうかがうと、以前は金沢で蒔絵の仕事をしていたそうです。漆器は一般的に木地師、下地師、塗り師、蒔絵師と分業されているそうです。蒔絵師はたくさんいるそうですが、木挽き師はなり手があまりおらず、女性の木挽き師は本当に珍しいそうです。
そんな中でゼロからカタチを作り出すモノ作りの楽しさや、伝統を継承するために使命感を持ってこの仕事に就いたとおっしゃっていました。
お話を伺っている最中もずっと木を挽いていて、私が帰る頃にはひとつ器が完成していました、スゴイ!
さて次に向かったのは漆塗り工房です。こちらで漆の絵付け体験をしました。
素材は好きなものを選べます。実際に使えるものがよかったので、箸への絵付けにしました。まずはかぶれる可能性があるので、エプロン、ビニール手袋に腕サック、そしてマスクと入念に肌を保護します。
本来の漆の色は乳白色らしいのですが、そこにベンガラなどの顔料を混ぜて着色した5色の漆を用意していただきました。今回は極めてシンプルに。赤一色で絵付けしました。箸は絵付け面が細くて小さいので、けっこう至難の技でした。
その後すぐに金粉を蒔絵しました。これで一気に華やかな印象に。
漆はすぐには乾かないので2週間ほど乾かして完成とのことでした。
私が「梅雨の時期などはなかなか乾かなくて大変ですね」と言ったら、「いえ、漆は程よい水分がないと乾かないんですよ。冬なんかは室(ムロ)の中に湿った布を貼って、その中でゆっくりと乾かすんです」とこのと。私が驚いていると「ほら、漆っていう漢字には傘の下に水っていう字が入っているでしょ?漆の特性からこの漢字がついたんですね~」さらに驚く私。。。。勉強になります。。。
ちょうど職人さんが拭きの作業をしているとのことで、特別に工房を覗かせていただきました。「拭き」ってなに??と疑問に思いながらついて行くと、下塗りした漆を塗った直後に布で拭き、木地に漆を刷り込ませる作業のことでした。これを5、6回繰り返して下塗りが完成するそうです。これが「下塗師」の作業でした。
うるしの里では初めて見聞きすることばかりで大変貴重な体験をしました。
私はスペインの伝統工芸を職にしていますが、日本の伝統工芸ももっともっと若い人たちに継承されて行くといいな、とつくづく感じました。
最後は金沢駅にあった巨大な九谷焼のレリーフ画。すごいなー、九谷の職人さん。大胆かつ繊細な手仕事です。
最後まで驚かされることの連続で大いに刺激を受けた旅でした。<KY>