陶芸家:濱田庄司

前回のブログ「陶芸家・河井寛次郎」に続き、今回は同じ民藝陶芸家の濱田庄司について書きたいと思います。

濱田庄司(1894-1978)の活動拠点は栃木県の益子町です。益子焼で有名なこの地に晩年まで住み続け、民藝陶器を作り続けました。

濱田は河井寛次郎の2年後輩で、東京工業学校(現在の東京工業大)の窯業科を卒業後、河井が就職していた京都市立陶芸試験場に就職し、釉薬の研究に没頭します。

その頃にイギリスから日本に来ていた陶芸家のバーナード・リーチ(1887-1979)や民藝運動を提唱していた柳宗悦(1889-1961)と出会い、この運動に共鳴するようになります。その数年後、今からちょうど100年前の1920年にバーナード・リーチと共にイギリスに渡り、イギリスの伝統的技法であるスリップウエアを学び、1924年に帰国。その後沖縄の壺屋焼を学び、以前から深い関心を寄せていた自然豊かな益子の地に居を構えて作陶を始めました。

今回私が訪れたのは、「益子参考館」と「益子陶芸美術館」です。

「益子参考館」は広大な敷地の中に、濱田の趣味で世界中から集められた工芸品のコレクションや親交のあった工芸作家の作品が展示されている石蔵が2つと濱田の別邸(本邸も近くにある)、陶芸工房、そして巨大な登り窯が設置されています。

まず石蔵のコレクションから。

前出のバーナード・リーチの作品やイギリスのスリップウエア(陶土に化粧泥を施して釉薬を掛けて焼く技法)の数々。

手前のつぼはスペインのスグラフィート(掻き落とし技法)。その後ろはエジプトの織物。顔の表情がいい味出してます。

石蔵を出て小高い丘を上るとそこは濱田の別邸です。立派な茅葺き屋根です。近隣から移築し、建具や土間、馬屋だったスペースを濱田の設計でリフォームしたそうです。

入り口には狛犬ならぬ、狛ひつじが。。。写真には写ってませんが、右端にもひつじがいて、2頭でお出迎えしてくれます。

中は和室が3間続き、その奥に土間があります。

和室や廊下にも様々な工芸品が並んでいます。こちらはスペインのつぼとそれ専用の飾り台。確かにスペインでこういう飾り台(つぼをはめ込むために穴が開いている)をよく見かけました。

土間はとってもおしゃれ。時代を超えて愛される、生活に役立つ手工芸品に囲まれた生活。今もこのままここで暮らせそうな雰囲気です。

こちらはアメリカの籠。洗濯物とか入れて運ぶのかなー?

こちらはイランの石鍋とフィンランドのほうき。北欧にもほうきがあったんだ、とちょっとビックリ。

この土間はカフェスペースになっていて、実際に座ってくつろぐことができます。

家具も道具もすべて使い込まれていて、生活しながら長い時間をかけてこの家に馴染んでいったのだろうな、なんて想像が膨らみました。

続いて庭に出ると、隣には長屋のような工房がありました。

手前に3台、奥にも3台のろくろが並んでいます。その向かいには作った作品を乾かす乾燥室もありました。

この工房を奥まで抜けるとその先には窯場があります。

手前は赤絵付け専用の窯、奥が登り窯です。赤絵は低温焼成のため、他の作品とは一緒に焼けないのです。

濱田は窯業科で基礎科学面を学び、就職先では釉薬の研究をしていたので、窯ももちろん自作、歳を重ねても釉薬の研究に余念が無かったようです。

この圧倒的な知識と技術、そして開放的な性格もあって濱田のもとには陶芸家がどんどん集まり、この窯場で共同作業していたようです。隣の別邸では仲間達と酒を飲み交わすなど、交流の場としてよく使用されていたとか。

酔っ払って大切なつぼを割ったりしなかったのですかね。。。

こちらは濱田自身の作品。「流し掛け」という濱田の独特な釉掛け方法です。

手柄杓ですくった釉薬を、皿やつぼに流し掛ける技法なのですが、実際に掛けているビデオを見ると、流している、というか振り掛けている、と言った方が良いかもしれません。まったく躊躇なく一気に振り掛けているように見えました。

訪れたのは11月の頭だったのですが、益子はすでに紅葉が始まっていました。

さて、続いて「益子陶芸美術館」でやっていた企画展を見に行ってきました。

「英国で始まり 濱田・リーチ 二つの道」です。

リーチと一緒に渡英した濱田はイギリス最西端の港町、セントアイヴィスに東洋式の登り窯を築き、リーチと共にイギリスの近代陶芸の礎となり、その後リーチ派と呼ばれる作家をこの地から数多く生み出しました。若い作家達の指導もしながら一方で自身の作陶も探究し続け、ロンドンで個展を開くなど濱田のイギリス生活は大変充実したものとなりました。この企画展ではリーチと濱田がセントアイヴィスで作った作品に始まり、リーチ派の作家達の作品、そして今現在のイギリスの陶芸を紹介展示しています。残念ながら写真撮影はNGでした。リーチと濱田の技が継承され、それが発展を遂げて現在のイギリスの民藝陶芸があることがわかりやすく展示されていて、とても勉強になりました。

今回は日帰り旅でしたが、天気にも恵まれ、自然も満喫できてとてもリフレッシュできました。<KY>

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