ガウディ建築 トーレ・ベリェスグアルド 前編

今回はバルセロナにあるガウディ建築のひとつ「トーレ・ベリェスグアルド(Torre Bellesguard)」をご紹介します。書き始めたら写真がたくさんありすぎたので2回に分けて掲載します。

*2017年訪問時の情報です

トーレ・ベリェスグアルドは1900~1909年にかけてフィゲラス家のために建てられました。紀元前から人の住む土地で中世の城の遺構もあり、それを修復し活かす形としてゴシック様式とモデルニスモが組み合わされています。

現在も所有者の方がお住まいなので、一部非公開。見学はガイドツアーになります。

私の訪問時、ガイドツアーは土日のみだったため自動的にオーディオガイドツアーになりました。2021年10月現在、オーディオガイドは使用禁止になっており(感染対策でしょうか?)、見学は火~日まで全てガイドツアーのみのようです。

この日泊まっていたサグラダファミリア近くのホテルからベリェスグアルドまでは約50分。メトロとバスを乗り継いで10時前に到着。見学は10時からなのでしばし門の前で待ちます。

門の作りも面白く、右側はただの曲がったネットに見えますが、わざとこのような形に鉄を編んでいます。人が通る時はこの部分がドアとして開き、車が通る時は全体が開きます。
木製の小屋がチケット売り場。

オーディオガイドツアーの場合、チケット購入時にオーディオガイドを渡され(日本語がありました)、建物入口への集合時間を教えられます。時間までは自由に庭を見学できます。
まずはチケット売り場の前から左にのびる道を通って、城の遺構へ。

上へ登れる階段があります。日本の城だとここは兵が待ち伏せする場所…

どこまでが復元でどこからが創作か分かりませんが、矢狭間もあります。でもよく考えてみれば一戸建住宅の庭なんですよね。子供の頃こんな家に住んでたら絶対忍者ごっこしたと思う。

城塞跡を抜けるとベリェスグアルドが見えます。
城跡と違和感のない石の外壁やゴシック風の大窓が目を引きますが、見上げると実にガウディっぽい塔。

建物の前は開けた庭になっており、あちこちにタイルが見られます。冬、花の少ない季節も明るい空間になりますね。だいぶ剥げてるけど…

花器はタイルを割って貼り直したモザイク。柄はドラゴン?鷲? 下のタイルは建物内部にも多く使われているライオンとニワトリ。

円形花壇を囲むタイルベンチ。

天使がアラゴン王国の盾を掲げています。4本線のモチーフはカタルーニャの旗になっていますね。

ベンチの端には水抜き穴が! 面白~い!
夏、日影のタイルベンチはひんやりして最高です。日向のタイルベンチは火傷するかってくらい危険なシロモノですが。

建物の正面玄関は見所がいっぱい。

玄関上のイスラムっぽいアーチのステンドグラス窓。内側へと凹んでいる壁に星のタイルが貼られています。なんだかエジプト王墓の壁画を連想しちゃいます。

玄関横のモザイクタイルのベンチ。虹色のグラデーションがとても綺麗です。可愛らしいモザイクですが、1410年にここで亡くなったバルセロナ家最後のアラゴン王、マルティン1世に関する悲しい歴史が描かれています。

ベリェスグアルドは1909年に建築が中断され、その後ガウディの弟子ドメネク・スグラニェスによって1916年に完成しました。こちらのモザイクの「MCMIVI」はローマ数字で1916となります。
白い帆の船はマルティン1世の嫡子が戦いで亡くなったという悪い知らせを表しています。

こちらのモザイクに描かれている山はモンセラート。バルセロナ近郊の山でカトリックの聖地です。山には暗雲がたちこめ、王家の終焉を表しています。マルティン1世の亡くなった1410年のローマ数字が描かれています。
通常1410はMCDXですが、100=Cのため4つ並べてMCCCCXとしたようです。百年前はこのような書き方だったのかもしれませんが。

実際のモンセラート。ノコギリ山という意味です。一緒のドミトリーだったオーストラリア人カップルが是非行ってこいと言うので訪れました。1999年撮影

玄関の鉄ドア。こういうものは曲げた鉄同士を溶接しているイメージですが、このドアはねじったワイヤーが多く使われています。ベリェスグアルドでは窓格子など他の部分も編んだような鉄の表現が多いです。
文字は聖母マリアの無原罪の御宿りのことが書かれているようです。(間違っていたらご指摘ください…)

玄関横の壁。色別に分けた石をモザイクとし、凹凸に貼っています。部分的に剥がれているので是非修復してほしいな…

玄関の上には「Bellesguard」のモザイクタイル。

次回はいよいよ建物に入ります!<RK>

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