オランダ北部のレーワルデン(Leeuwarden)という街に行ってきました。
この街には国立の陶磁器博物館があります。
元々この建物は18世紀頃、現在の王室の創設者であるオラニエ・ナッソーの王妃であるマリア・ルイーズが住んでいた宮殿でした。
その後、だまし絵でよく知られるエッシャーの生まれた家としても有名になり、現在は博物館になっています。
入口の横の外壁には大きなエッシャー作品のパネルが設置されていてなかなか大胆な演出です。
この博物館の最大の特徴は、日本や中国などのアジアから、中東、西洋までの膨大な陶磁器コレクションです。
様々な国の技法やデザイン、東洋から西洋にどのような流れで焼き物の文化が伝わったのか、など陶磁器の歴史の教科書が作れそうな数のコレクションでした。
オランダは陶磁器の歴史の中ではかなり後発で、中国や日本の完成され尽くした磁器の模倣をするところから始まっています。
こちらは中国と日本の磁器を手本に作られたオランダのデルフト焼の花瓶。
手前がオランダ、右奥が中国、そして左奥が日本の伊万里焼。
画像ではよく見えないかもしれませんが、オランダの花瓶には釉薬に無数の「よれ」と細かいピンホールが見られます。オランダの試行錯誤ぶりが手に取るようにわかります。
こちらは「イスパノ・モレスク」、スペインのマニセスで作られた大皿。
イスラムから伝わったラスター彩を全面に施した美しい絵付け。画像ではよくわからないかもしれませんが、全体的に赤色に近い銅色に輝いています。
試行錯誤の結果、オランダ独自の技法で完成したデルフト焼の素晴らしいコレクション。
オランダらしさが現れている牛の搾乳のオブジェ。日本ではまず作られることのないモチーフですね。人に対して牛が巨大すぎるのが面白い。誇張しすぎ?
タイル画コレクションもオランダならでは!
私のお気に入りはこちら。やっぱり大ざっぱで全体的に愛らしいスペインタイル風が好きです。
各地域の陶磁器コレクションは、なんだか展示にまったく力が入っていない様子。
数が多すぎて展示スペースがないのはなんとなく理解できますが、地面すれすれに雑に並べただけ?中東圏ペルシャなどの美しいコバルトブルーの器たちが足元に転がってます。。。
イギリスのスリップウエア、スペースがないのはわかりますが重ねて展示されてるのは初めて見たかも。地震はないだろうからまぁ気にならないのか??
(※一応、国立博物館です)
ピカソの作品もありました。
天才ぶりを陶芸でも発揮してますよね。
こちらは顔料の研究。寒色青系から暖色赤系までたくさんの研究サンプルがあって興味深い。特に赤系はやっぱり真っ赤に発色させるのに苦労している様子が伝わります。
最後はエッシャーの紹介コーナー。エッシャーはスペインのアルハンブラ宮殿を訪れた際、無数の幾何学模様を目にして、自分のライフワークとも呼べる「永遠」と「無限性」がテーマの作品を生み出していきます。その元となった幾何学のモザイクタイルの展示と、トリックアートの部屋。
指定の位置に立つと、終わりのないブラックホールに入っていくような不思議な空間でした。
一部の展示方法はさておき、良い意味で国立博物館ならではの豊富なコレクションでとても見応えがありました。
日本から観光に来てわざわざここまで行くのは大変ですが、併設のカフェもおしゃれだし、街も美しいので、時間に相当余裕のある場合は訪れてみても良いかもしれませんね。
なお、エッシャーについてはデン・ハーグに独立した素晴らしい美術館があります。こちらに興味がある方はインスタグラムに投稿していますので覗いてみてください。<KY>