先日、東京・渋谷の「たばこと塩の博物館」で開催されている企画展「小林礫斎 手のひらの中の美 〜技を極めた繊巧美術〜」に行きました。
ミニチュア作家である小林礫斎の作品を中心に、彼の作品も収集した中田實コレクション、江戸玩具などが展示されていました。
これらの職人が作ったミニチュアはあくまでも大人の愛好家、収集家の為のものであって、決して子供が遊ぶものではありません。スケールもドールハウスのように1/12とか1/24とか決めて作っているわけではなく、あくまでも私の印象ですが「どこまで細かいものが作れるか限界にチャレンジ!」というミニチュアなのです。
私も少しドールハウス用のミニチュアを作りますが、とてもとても比べものにならない、それを「小さい」と表現すれば展示作品はみな「極小」。だって見えないんですもの・・・細工が細かすぎて。
普通の展覧会よりも展示ケースのガラスから作品までが近くなるよう展示されてはいましたが、それでも遠く感じます。やはり手にとって、さらに虫眼鏡を使って見るものなんでしょうね。
作ったミニチュアばかりでなく小さいコインのコレクションや、米粒に文字や絵が書いてあるものなども。しかし米絵は全く読めません。単語どころか文章が書いてあります…
そして初めてゴマ粒に文字と絵が書いてあるものを見ました。年齢を重ねると大抵のことに驚かなくなりますが、久しぶりに衝撃を受けましたよ。
小林礫斎 は1884に生まれ、1959年に亡くなりました。展示品はその時代に生きた礫斎を始めとする職人のものが中心。江戸の名残を感じる蒔絵の硯箱(硯や筆も入っています)や書画、書画に押される印章、茶道具(茶筅にびっくり)、独楽、人形などなど、ほとんどがオリジナルと同じ素材や技法で作られています。
超絶技巧って、こういうものを言うんでしょうね。本職の職人がさらに腕を磨いて取り組んだ、美術工芸品です。
ミニチュアには可愛いと感じる大きさがあります。人それぞれ違うだろうけど私にはオリジナルの1/10~1/12くらい。あまり大きいと子供のおもちゃみたいだし、小さすぎると細工も粗くなるから。
今回の展示品はほとんどがこの「小さすぎる」ものでしたが、細工はオリジナルにも見劣りしない出来。全く粗くありません。それならば可愛く感じるか?と言うと、そうでもないんです。
これ、可愛いものを作ろうと思ってないんです。凄いものを作ろうとしているんです。「これ、もっと小さくなるかね?」「いっちょやってみるか」「おおっ凄い、おまえさん天才だね!」みたいな会話が聞こえてくるような感じ。拡大鏡を使って初めて見える、そういう部分があることに作り手も注文主も喜びを感じているマニアックな世界なのだと思いました。こんな世界、大好きです。
たばこと塩の博物館では過去にも同様の展示をしていますが、まだご覧になったことの無い小さいモノ好きの方は、会期も長いのでぜひ足を運んでみてください。<R.K>
たばこと塩の博物館HP (同企画展は2011年2月27日まで)